土舘聡一
9月1日で100年となる関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式典の主催者が7月31日、追悼文を送るよう小池百合子知事あてに要請した。小池知事は就任翌年の2017年以降、それまでの都知事が続けていた追悼文の送付をやめている。要請に対し、都の担当者は「結論が出たら(主催者に)伝える」としている。
式典は1974年から例年、9月1日に都慰霊堂がある横網町公園(墨田区)で開催。震災で「暴動を起こした」というデマを信じた住民らに虐殺された朝鮮人らを追悼している。
小池知事は2017年以降、「犠牲となったすべての方々に哀悼の意を表しており、個々の行事への送付は控える」として同式典に追悼文を送っていない。今年2月の都議会でも姿勢を変えない考えを述べていた。
要請した式典実行委員会の宮川泰彦委員長(82)は31日に記者会見し、「個々の追悼文は控えるという説明は理解出来ない。二度手間といっているように映る。歴史的事実を認めたくないという姿勢なのか」と批判した。
小池知事は虐殺の有無について、これまで「歴史家がひもとくもの」として認識を明言していない。宮川氏は「触れたくない、答えたくないという政治家が使う言葉。小池知事も逃げ回る政治家と同じなのかと思ってしまう」とも話した。
関東大震災での朝鮮人虐殺を巡っては、昨年、人権施策担当の都職員が、都が委託した外郭団体の人権企画展で朝鮮人虐殺を事実として述べた場面がある映像の上映に難色を示すメールを団体側に送った問題が発覚。その際、知事が追悼文を送っていないことに触れ、上映について「都知事がこうした立場をとっているにもかかわらず、朝鮮人虐殺を『事実』と発言する動画を使用することに懸念があります」などと伝えていた。都は、メールについて「必要のない表現だった」と釈明している。
宮川氏は「行政職員が忖度(そんたく)する形で影響が出ている。一般市民も、追悼文が送られない式典というのはそのくらいのものでしかないと思ってしまう」と指摘し、「過去の歴史を見つめて二度と同じ間違いを繰り返さないと語り継いでいくことが大切。100年という年になぜ虐殺が起きたかを考えてほしい」と語った。(土舘聡一)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル